3月末に2022年の入試の結果を反映した日能研の偏差値表が公開された。前年2021年の入試結果偏差値表と比較して、2022年は偏差値が上がった、あるいは下がったなど各中学がどのように変動したかを調べてみた。※調べたのは男子の表のみ。一部偏差値の記載がない学校もある
2022年入試結果偏差値表
こちらは2022年入試の結果を反映したR4偏差値表
※R4偏差値:合格ライン80%の偏差値
(更新)2023年版の分析はこちら↓
偏差値が上がった中学
偏差値が2以上あがった主だった中学をピックアップしてみる。
広尾学園小石川 難度大幅上昇
広尾小石川①(2/1午前) 49→54 (+5)
広尾小石川②(2/1午後) 53→61 (+8)
広尾小石川③(2/2午後) 53→58 (+5)
広尾小石川④(2/3午後) 54→? (?)
広尾小石川⑤(2/4午後) 55→58 (+3)
2021年→2022年にかけてもっとも偏差値が上がった中学と言っていい。広尾学園小石川中学は2021年開校。広尾学園の姉妹校として大いに注目を集めた。初めての入試の2021年は定員120名のところ3800名超の応募があり、倍率は高かったものの偏差値はそれほど高くないところに落ち着いた(いや、当初の予想偏差値は48程度だったので、それよりも+5程度高かった)。左側の数値が2021年度入試結果偏差値。→の右側の数値が2022年度の入試結果偏差値。広尾学園小石川は2/1以降は2/2~2/4まですべてが午後受験であるという併願のしやすさが高倍率、高偏差値化につながったと考えられる。2021年出願者3801人→2022年出願者4047人。しかしその中学のもっとも適切な偏差値は2/1午前での結果と考える。
広尾小石川①(2/1午前) 49→54 (+5)
2/1は各学校の入試が集中するので、第一志望ならこの日を受験するからだ。なので、この偏差値54が本来の位置だと思われる。それでも昨年度から+5なので、まだまだ上がるか、それとも高偏差値化しすぎて、2023年は敬遠傾向になるか!?少なくとも2/1午後受験(偏差値61)はさすがに敬遠されるだろう。
暁星 名門復活か?
幣息子の志望校の一つであった暁星だが、その理由は名門のわりにここ数年、偏差値が低くなっていたことにある。その昔は偏差値60超の難関校だったわけだが、2021年のR4結果偏差値は53(予想は54)。でも進学実績を見ても決して悪くない(むしろ医学部合格率などは上位)のでお得感があった。ちなみに過去7年間のR4偏差値の推移をみると
暁星① 58→56→56→57→53→54→53→57(2022年)
と右肩下がりだったのが、2022年で見事復活した。俗にいう6年周期(高偏差値の時に6年前に入学した生徒の大学合格実績が高くなるので、その翌年の難易度が上がる)かもしれない。
出願者数も激増。
暁星①(2/2午前)
2021年 219人→2022年 290人(+132%)
暁星②(2/3午後)
2021年 232人→2022年 291人(+125%)
実質倍率も激増。
暁星①(2/2午前)
2021年 1.7倍→2022年 2.8倍
暁星②(2/3午後)
2021年 6.1倍→2022年 12.3倍
2021年なんて1.7倍ですよ(実は我々はここに目をつけていた)。受験者の平均点以下でも合格できたのに、それがいっきに2.8倍と並の難関校と同じレベルになってしまいました。
ちなみに暁星は2020年から2/3午後に暁星②の入試を行うようになった。偏差値の推移は
暁星② 58→58→58(2022年)
定員が10名と少ない且つ午後受験であることから、初年度が偏差値58と高め。そのまま推移していたが、2022年は実質倍率が6.1倍→12.3倍と激増したわりには偏差値は変化なしだった。
開智日本橋 新鋭校
開智日本橋①(2/1午前) 51→53 (+2)
開智日本橋②(2/2午後) 56→57 (+1)
開智日本橋③(2/3午後) 53→56 (+3)
開智日本橋④(2/4午前) 54→57 (+3)
こちらの開智日本橋も数年前は偏差値40台後半だったのに近年上昇してきた。複数回受験且つ午後受験を組み込むと偏差値が上がる傾向にあるようだ。志願者数も2709人→3194人と大幅増。しかし、広尾小石川で言ったように、2/1午前入試の偏差値をその学校の本来のレベルとみるべきだ。
開智日本橋①(2/1午前) 51→53 (+2)
それでも、昨年から+2なので、この傾向だと来年度以降はもっと高くなりそうな予感だ。
帝京大学中学 大躍進
帝京大①(2/1午前) 49→55 (+6)
帝京大②(2/2午前) 51→54 (+3)
帝京大③(2/3午後) 56→52 (▼4)
一方で、2/1午前の本命入試で+6もあげてきた中学がある。帝京大学中学校。大学なのか中学なのかわからん名前だが、帝京大学に進学する学生はあまりいなく、進学校として実績をあげている。帝京の中学と言えば以下の3つがあるのだが、何が違うかというと法人が違う。
帝京大学中学・高等学校 学校法人帝京大学
帝京八王子中学・高等学校 学校法人沖永学園
帝京中学・高等学校 帝京学園
帝京大学中学はいわゆる帝京大の付属校であるがそのまま大学に進学する学生は少ないらしい。帝京八王子と帝京中学は帝京の系属校で1/3~2/3程度が帝京系列大学に進学する。なんとも謎な感じだがいずれにせよ、進学実績も上がっているのが偏差値が上がった理由であろう。
かえつ有明 1日午後に要注意
かえつ①(2/1午前) 49→48 (▼1)
かえつ①(2/1午後) 49→53 (+4)
かえつ②(2/2午後) 50→49 (▼1)
かえつ③(2/3午後) 51→51 (±0)
幣息子が受験したこともあり、ちょっと触れておきたい。2/1午後だけ偏差値が大幅上昇し、他の受験日はほぼ変動なし。むしろ▼1の日程もある。なぜこうなったか。
かえつ①(2/1午前)
合格者数67→56人 実質倍率3.3倍→5.0倍
かえつ①(2/1午後)
合格者数168→82人 実質倍率2.3倍→5.3倍
かえつ②(2/2午後)
合格者数23→69人 実質倍率10.9倍→4.1倍
かえつ③(2/3午後)
合格者数15→55人 実質倍率14.1倍→4.5倍
そう、昨年2021年2/1午後入試で合格者を出しすぎてしまったのである。その反動で2022年は合格者数が半数になってしまい、倍率も2.3倍からいっきに5.3倍となってしまったことが偏差値が上がった要因と考えられる。幣息子の場合、2/1午後は別の学校(世田谷学園)を受験しようとしていたが、かえつ②(2/2午後)の実質倍率があまりに高いので、敬遠して前倒しして2/1午後受験をした経緯がある。さすがに合格者数が半数になっていると、変なミス1つで不合格だった可能性もある。が、これは2021年が異常だっただけで、来年以降は2022年のような合格者配分になると思われる。2/2や2/3が倍率高くて躊躇しがちだが、来年以降は併願しやすくなりそうだ。
早稲田佐賀 ついに偏差値60目前
こちら(早稲田佐賀はお得か!?)でも書いたのだが、早稲田大学に行くためであれば、他の付属(早稲田大学高等学院中学部 偏差値62)や系属校(早稲田実業 偏差値65、早稲田中 偏差値65)よりも偏差値的にだいぶ入りやすい早稲田佐賀だったが、2022年度ついに偏差値59となり、お得感が全くなくなってしまった。
1月A首都圏 偏差値推移
2017年度 偏差値48
2018年度 偏差値50 (+2)
2019年度 偏差値53 (+3)
2020年度 偏差値57 (+4)
2021年度 偏差値55 (▼2)
2022年度 偏差値59 (+4)
あーあ、5年前だったら偏差値48だったのに。
2021年
受験者数 514人 合格者 331人 倍率1.55
2022年
受験者数 551人 合格者 326人 倍率1.69
これを見ると志願者数が激増したとか合格者を絞ったとかそういうわけでもない。単に受験者のレベルが上がってきたと見るべきだろう。
1月本校/九州受験
2021年 偏差値51
2022年 偏差値52 (+1)
しかし、早稲田佐賀本校/各九州会場での受験では偏差値がほぼかわってないので、越境してでも早稲田に行きたい場合なら九州までいって受験をしたほうがよさそうだ。昨年まではA日程(1/11九州、首都圏・名古屋)とB日程(1/17九州)と分かれていて、2回受けることができたが、2022年から1回になってしまった。
偏差値が下がった中学
一方、下がってしまった中学である。
巣鴨 かつて東大合格者数TOP10常連校
巣鴨といえば、1990年代は毎年東大合格ランキングTOP10に入るくらいの超難関校だったわけだが、ここ数年はどうしちゃったの?っていうくらいだ。2018年の偏差値はなんと50である。幣息子が小4で入塾したときにこの偏差値を見て、あの巣鴨がこのくらいで入れるの?こりゃあラッキーだと喜んでいたのだが、数年のうちにやっぱり難化してしまった。しかし2022年は一定の歯止めがかかったのか前年から軒並み偏差値が下がった。
巣鴨①(2/1午前) 56→56 (±0)
巣鴨算(2/1午後) 63→63 (±0)
巣鴨②(2/2午前) 60→57 (▼3)
巣鴨③(2/4午前) 60→58(▼2)
志願者数も2066人→1727人(83.6%)と減り、全日程で倍率も下がった。巣鴨第一志望だった人は今年受かりやすくてラッキーだったのではないだろうか。
さて、巣鴨の偏差値が下がっている理由のうちの一つとして「東大合格者数」だと考えられる。
2022年 東京大 8名(現役4名)
2021年 東京大 8名(現役7名)
2020年 東京大 12名(現役7名)
2019年 東京大 21名(現役14名)
2018年 東京大 11名(現役7名)
2017年 東京大 12名(現役4名)
2016年 東京大 13名(現役7名)
・・・
1993年 東京大 59名
1992年 東京大 78名
1992年は東京大合格者数が過去最高の78名だったのについに一桁になってしまったのだから、時代は移り変わりがあるということだ。しかし、巣鴨が単に凋落したと片づけてしまってよいだろうか。
2022年 医学部医学科 合格者数ランキング
1位 豊島岡女子学園
211名(現役136名) 現役合格率40.1%
2位 滝高校(愛知)
142名(現役75名) 現役合格率23.1%
3位 巣鴨高校
140名(現役67名) 現役合格率25.2%
なんと医学部合格者数は3位!つまり巣鴨はかつての東大偏重からしたたかに医学部へと移行していたのである(たぶん)。この30年間サラリーマンの給料が上がってなく世界から日本が取り残されている状況で、至極まっとうな選択だ。医者は給料いいし、モテるからねぇ。
高輪 コロナ禍で志願者が増えたが今年は
高輪中はメインとなる2/1と2/2入試で偏差値を下げた。
高輪A(2/1午前) 53→51 (▼2)
高輪B(2/2午前) 54→52 (▼2)
高輪算(2/2午後) 59→59 (±0)
高輪C(2/4午前) 54→54 (±0)
高輪はコロナ禍の2020年、2021年と志願者数を増やした中学だ。
高輪A(2/1午前) 志願者数と偏差値
2018年 297名(偏差値49)
2019年 282名(偏差値49)
2020年 344名(偏差値51) 前年比+62
2021年 393名(偏差値53) 前年比+49
2022年 321名(偏差値51) 前年比▼72
コロナ前の2019年の2年後は志願者数が282名→393名(139%)と激増している。そりゃ偏差値も上がるわけだが、2022年は落ち着いたと見た方がよいだろう。
高輪B(2/2午前) 志願者数と偏差値
2018年 518名(偏差値54)
2019年 415名(偏差値50)
2020年 532名(偏差値53) 前年比+117
2021年 624名(偏差値54) 前年比+92
2022年 520名(偏差値52) 前年比▼104
こちらもコロナ前の2019年の2年後は415名→624名(150%)と大激増。偏差値も+4だ。しかし2022年は2年前の水準に戻った。偏差値が例年より高くなるとより戻しがある傾向がわかる。
偏差値2以上変化があった中学一覧
2/1午前
慶應普通部 66→64 (▼2)
帝京大①49→55 (+6)
広尾小石川①51→54 (+3)
桐蔭①前49→52 (+3)
日本大学A①49→52 (+3)
高輪A 53→51 (▼2)
東洋大京北①47→50 (+3)
2/1午後
広尾小石川②58→61 (+3)
東農大一①59→61 (+2)
神奈川大①56→59 (+3)
開智日本橋特56→58 (+2)
青稜①B 56→54 (▼2)
東洋大京北②50→54 (+4)
かえつ①後49→53 (+4)
関東学院B49→51 (+2)
安田先進②49→51 (+2)
目黒日大②45→50 (+5)
2/2午前
巣鴨② 60→57 (▼3)
神奈川大② 54→57 (+3)
暁星① 54→57 (+3)
芝浦工大附② 54→56
世田谷② 58→55 (▼3)
青稜②A 53→55 (+2)
帝京大② 51→54 (+3)
高輪B 54→52 (▼2)
独協③ 47→50 (+3)
桐光② 47→49 (▼2)
順天② 41→45 (+4)
2/2午後
東農大一② 59→61 (+2)
広尾小石川③ 55→58 (+3)
芝浦工大附(特) 54→56 (+2)
ドルトン② 47→51 (+4)
日大藤沢② 48→50 (+2)
宝仙理数② 45→47 (+2)
桜美林② 48→46 (▼2)
2/3午前
慶應中等 65→67 (+2)
都立武蔵 61→64 (+3)
学芸大竹早 57→54 (▼3)
成城学園② 51→54 (+3)
2/3午後
開智日本橋③ 53→56 (+3)
帝京大③ 56→52 (▼3)
2/4午前
巣鴨③ 60→58 (▼2)
開智日本橋④ 54→57 (+3)
芝浦工大附③ 52→54 (+2)
日大藤沢③ 46→49 (+3)
明治学院③ 48→46 (▼2)
2/4午後
広尾小石川⑤ 56→58 (+2)
目黒日大④ 45→49 (+4)
東京電機④50→48 (▼2)
足立③ 45→47 (+2)
2/5以降
都市大付 60→62 (+2)
国学久我山③ 56→54 (▼2)